管理者が知っておきたい労務Q&A

これまで医療機関の看護管理者やスタッフなどから寄せられた、労務管理に関するQ&Aです

インデックス

労働時間に関すること

Q1:始業前労働は時間外手当の対象ですか?
Q2:能力不足による残業でも割増賃金の支払いは必要?
Q3:指示なく自主的に残業している者への対応は?
Q4:夜間・休日のオンコールの対応は時間外労働?
Q5:時間外の会議や研修への参加は時間外労働?
Q6:2交代制夜勤や長日勤で所定労働時間が長いのは問題?
Q7:自主的な持ち帰り残業は労働時間ですか?
Q8:職員の始業・終業時刻の把握をしないのは問題?
Q9:訪問看護や訪問介護の移動時間は労働時間?

年次有給休暇に関すること

Q10:業務上支障がある場合は年休の申請を却下できる?
Q11:年休の申請は一週間前までとする、と決めていい?
Q12:退職に際し複数名から同時に年休請求があったら?
Q13:勤務シフトを組む際、年休を割り振ってもいい?
Q14:年休の「買い取り」って違法ですか?
Q15:産休中や育休中に年次有給休暇は取得できますか?
Q16:年休は本人から希望がなければ与えなくてもいい?
Q17:年休中に業務命令で出勤してもらうことは可能?
Q18:当日の朝になって出された有休の申請も認めるの?
Q19:年休取得日に別のアルバイトで収入を得るのは?
Q20:年休中にオンコールで呼び出すことは問題ですか?

休憩・休日に関すること

Q21:急変対応等で休憩が取れなかった場合どうすれば?
Q22:休憩時間中の外出を許可制にすることは問題?
Q23:振替休日は1週間以内に取らなければならないの?

夜勤・当直・オンコールに関すること

Q24:夜勤16時間勤務は2勤務とカウントできるの?
Q25:夜勤の回数や時間に対して労基法の制限はない?
Q26:宿直勤務を本人希望で2回/週とすることは可能?
Q27:時間外や夜勤をさせてはならないのはどんな場合?
Q28:当直で睡眠が取れないまま翌日勤務ってどうなの?
Q29:オンコールの回数に制限はありますか?

育児・介護に関すること

Q30:育短勤務の職員に残業をお願いしてもいいですか?
Q31:パートに対しても育休を与えなければならないの?
Q32:要介護認定を受けていない介護休暇は拒否できる?

その他

Q33:定額の手当をみなし残業代として支払うことは可能?
Q34:問題職員を解雇したいのですが、どうすればいい?
Q35:昇進して管理職になったら残業代は出なくて当然?
Q36:保健指導や健診のための通院休暇は有給にできない?

Q1:始業前労働は時間外手当の対象ですか?

多くの医療機関でよく提起される問題です。早めに来て情報収集をするとか、受け持ちの患者さんの容体が気になって早めに来るとか、その日の仕事の段取りをスムーズに行うため、あるいは、出勤の混雑を避けるため、早めの出勤で気持ちに余裕を持たせるため・・・。様々なケースがあるかと思います。
あらためて原則に立ち返ると、労働時間とは使用者の「指揮監督下」にある時間を言います。ですから、もし、その始業前労働が、業務命令に基づいていたり、使用者の指揮監督下にある時間であれば、当然に労働時間(賃金支払いの対象)として扱わなければなりません。
前述の例のように、ケース・バイ・ケースでもあり、必ずしも「自主的に早く出勤する」イコール「労働時間」とは思いませんが、それが黙示の指示行き過ぎた労働慣行等になっていないか、注意が必要です 。例えば、「新人は自主的に1時間早く来て情報収集しなさい」とか、「うちの病棟は伝統的に始業の30分前にくるのが当たり前」などです。
全員が常に30分以上は早く来ないと仕事が回らない、ということであれば、始業時刻そのものを見直す必要もあるでしょう。

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Q2:労働者本人の能力不足で残業となった場合でも、割増賃金の支払いが必要ですか?

この質問が多く寄せられるのは、同じようなルーチン業務をこなしていて、能力ある人は定時できちんと終わらせるのに、そうでない人は残業となり、そこに残業代が発生すると、結果的に能力がある人より給料を多くもらうことになるじゃないか! それっておかしくない? という釈然としない思いからのようです。
結論から言えば、実際に労働した時間であれば、理由の如何にかかわらず、認めなければなりません
しなしながら、このような場合、そもそも残業が必要か、あとどれくらいかかるのか、タイムマネジメントをあわせて教育・指導する必要性があります。その意味でも、残業は事後申請ではなく、事前申請によるべきです。しかし、これも運用を間違えると、「こんな残業、どうせ申請しても認めてくれない。結果的にサービス残業だ」となってしまうので注意が必要です。
なお、その一方で、能力のある人が残業代で不満に感じないよう、賞与、昇給、昇格等の面できちんと評価することも必要でしょう。能力のある人は、少々の残業代の差など気にならないくらい、上に伸びていくものです。(また、そうあるべきです)

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Q3:残業の指示がないのに自主的に残業している者に対する対応はどうしたらいいですか?

がんばって残ってるけど、その仕事、今日中じゃなくてもいいよね? いや、そもそも指示してないよね?
残業の指示がないとしても、その事実を認識していれば使用者側の暗黙の承諾となり、労働時間として扱わなければなりません。つまり、残業代が発生するということです。ですから、緊急でやむを得ない場合以外は、所属長の残業命令や、事前申請を必要とするなど、本人任せでない、明確な残業のルールづくりが必要です。
そもそも残業とは何か、労使で再確認しましょう。厳しい言い方をすれば、残業というのは、好き勝手にやっていい権利ではなく、あくまで業務命令に基づいて義務として行うものなのです。
ただし、管理者が気づいていない、本当に必要な残業を余儀なくされていないか、そこには注意してください。

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Q4:夜間・休日のオンコールの対応は時間外労働になりますか?

労働時間は使用者の「指揮監督下」にある時間なので、自宅などでの待機は原則的に労働時間ではありません。しかしながら、回数や頻度など過度に負担をかけることとならない配慮は必要でしょうし、賃金支払い義務がないとはいえ、一定のオンコール手当を支給するなど、負担に対する対応も大切です。 なお、施設内で待機する場合で、その時間の自由利用が保障されていない場合は「手待ち時間」であり、労働時間として扱われます。

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Q5:時間外の会議や研修、委員会等への参加は時間外労働にカウントするべきですか?

これも、医療機関ではよく寄せられる質問です。
原則的な考えから言うと、会議や研修会、委員会等への参加は、使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は労働時間となります。
問題となるのは、その明示的な指示があったのかなかったのか、曖昧な場合です。明示的な指示に基づかない場合の考え方の基準としては、次の3点となります。
まず、強制か任意か? 次に、業務関連性があるのかないのか、強いのか弱いのか? 最後に、参加しないことにより人事考課など、何らかのペナルティがあるか、あるいは本人の業務に具体的に支障が生ずるか? といったことです。
この3点に照らして、総合的に判断することになります。なかなか難しい問題ですが、業務の関連性が強い会議や研修会等であれば、極力、所定労働時間内に行うのが望ましいですし、自己研鑽など、本当に任意であれば、その旨をあらかじめ明確に伝えておくことです。それぞれの会議や研修会の趣旨について、参加者が共通認識できていることが、トラブルを防ぐ上でも大事です。

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Q6:2交代制の夜勤や長日勤などで、所定勤務時間が12時間とか14時間ということがありますが、労働基準法上問題はないんですか?

労働基準法32条では、法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間(職員が9人以下の場合は44時間)と定められています。この時間を超えて所定労働時間を定めることはできません。ただし、この例外として「変形労働時間制」という制度があり、多くの医療機関は、この一種である「1か月単位の変形労働時間制」を採用しています。
「1か月単位の変形労働時間制」は、例えば、1か月単位で勤務シフトを組む場合、そのトータルの所定労働時間が週換算で40時間(44時間)以内におさまっていれば、日や週によっては、法定労働時間を超える所定労働時間を設定できる、というものです。
注意しなければならないのは、医療機関だから自動的に変形労働時間制が適用されるのではなく、就業規則等に「1か月単位の変形労働時間制」を採用する旨と、その起算日や対象労働者の範囲、勤務の組合せの考え方などが記載されていること、そして実際に、期間の始まる前までに勤務シフトが周知されているなど法的要件が満たされていることが必要です。

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Q7:自主的な持ち帰り残業は労働時間ですか?

看護管理者の方でなくても、シフトの作成や委員会の資料作成などを自宅に持ち帰って行った経験があるのではないでしょうか? かくいう私も、以前の仕事では休日のほとんどを持ち帰り残業に費やしたことがありました。
業務命令でやるならともかく(もっとも、そんな業務命令を出すこと自体問題ですが)、一般論で言えば、退社後は使用者の指揮監督下におかれていない時間です。その作業を使用者からの場所的な拘束や時間的な拘束を受けることなく、例えば、早朝のファミレスでやることも、自宅でTVを観ながら、あるいは寝転んでビールを飲みながらやることも自由であれば、労働時間とは言い難いでしょう
その一方で、以前、22歳の英会話講師が、長時間の持ち帰り残業が要因でうつ病を発症し、自殺したのは労災であるとの認定が労働基準監督署から下されました。膨大な量の自作教材を作り続け、1か月の持ち帰り残業は82時間と推定されたそうです。ご本人は、本当につらかったでしょう。
この問題は、残業代の支払い云々ということではなく、うつ病を発症するほどの過重労働だったということです。いくら自主的であっても、そのような作業を日常的に余儀なくされ、使用者も黙認し、さらには、その時間があまりに行き過ぎたものであれば、一般論とはまた違った話になります。
少なくとも、施設側としては、自主的な持ち帰り残業に甘んじることは慎むべきでしょう。最近は、秘密事項や個人情報の漏えいの問題もあり、資料等の持ち出しを禁止することにより、持ち帰り残業を抑制しているケースもあります。また、仕事が好きな方であっても、退社後は、業務の延長ではなく、リフレッシュや自己研鑽などで成長してほしいものです。

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Q8:職員の始業・終業時刻の把握をしないのは問題ですか?

始業・終業時刻を把握、すなわち時間管理をすることは、労務管理の基本中の基本です。
ちゃんと所定労働時間勤務したか? 時間外労働はあったか? 深夜労働は? それらを把握しなければ、そもそも正確な給与計算もできないはずであり、それがサービズ残業の温床となってしまっている場合もあります。
また、最近は過重労働による脳・心臓疾患や精神疾患が増加しています。この点でも、労働時間を把握していなければ、使用者が適切に対処することもできず、本来果たすべき安全配慮義務を履行していないことになりかねません。
なお、法的には「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 (H29.1.20基発0120第3号)の中で、「使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」と示されていますので、法的義務としても始業・終業時刻は把握しなければならないということです。 なお、確認の方法として、「使用者の現認」や「タイムカード、ICカード等の客観的な記録による確認」「自己申告により行わざるを得ない場合に講ずるべき措置」などが示されています。

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Q9:訪問看護や訪問介護の移動時間は労働時間?

まず、「移動時間」を、事業所、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間と定義します。
自宅から利用者宅へ直行する場合は、事業所へ出勤するのと同様、通勤時間です。
使用者が業務に従事するために必要な「移動」を命じる場合、それは労働時間となります。
よく問題となるのは、移動の前後に「空き時間」ができる場合です。空き時間については、その時間の自由利用が労働者に保障されていない場合には労働時間に該当します。保障されていれば、休憩時間と同様の扱いになります。
給与が月給制の場合はあまり問題にならないでしょうが、時給制の場合は、本来労働時間として扱わなければならない移動時間を、労働時間から除外してしまっていないか注意が必要です。

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Q10:年休の申請があっても業務上支障がある場合は却下してもいいですか?

労働基準法上、「却下する」ことはできません。そういう概念がないのです。使用者側としては「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ、「時季変更権」を行使して他の日に取得してもらうことができます。
この「事業の正常な運営を妨げる場合」ですが、過去の裁判例では事業の規模、内容、その労働者の担当する作業内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきとしていており、実は結構ハードルが高いです。看護配置基準を満たせないからという理由でも、安易に行使はできないのです。
では、実務上どうするか? 本来、取得理由で選別することはできませんが、切羽詰まった事由や、普段無理して働いてくれているスタッフからの申し出でであれば、極力取得させてあげてください。そうでない場合は、ほかの時季にずらせないか相談してみてはどうでしょうか? そして、無理を聞いてくれた場合は、次の休み希望は優先的に叶えてあげる、などの対応をします。法律通りとはいきませんが、管理者の方の日頃のコミュニケーションと上手な対応により、トラブルはある程度減らせるのではないでしょうか。

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Q11:年休の申請は一週間前までとする、等決めていいですか?

請求期限を規定すること自体は可能ですが、請求期限を過ぎているという理由だけで一律に認めないとすると、労働基準法に抵触する場合もあり得ます。Q10にも出てきた「事業の正常な運営を妨げるかどうか」で判断することが必要です。
また、請求期限については事業の正常な運営を妨げるかどうか、時季変更権の行使をするかどうかの判断に必要な最小限度の期間を見込んで定めるのが望ましいと思われます。

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Q12:退職に際して、複数の者から同時に年休の請求があった場合、どう対応すればいいですか?

医療機関は、在職中、なかなか有休を消化できない状況が多いため、現実によく起こり得るケースです。退職日までの日数と、年休の残日数によっては、Q10で述べた「時季変更権」で対応することができないので、注意が必要です。つまり、退職日までの所定労働日数が10日、有休の残日数がそれ以上なら、10日請求されたら、消化させざるを得ないということになります。これは、複数人数であっても同様です。
適度な消化でリフレッシュして仕事に臨んでもらう、という年休の本来の趣旨からすると、残念なことでもあります。その一方で、ここまでがんばってくれたから、と割り切って消化させる医療機関もあるようです。
対応策としては、退職希望のヒアリングや意思確認はできるだけ早めに行い、引継ぎや有休消化希望も考慮した調整をするしかありません。それが結果的に、お互いに気持ち良く退職を迎えることにもつながります。また、年次有給休暇の計画的付与制度を活用するなど、日頃から効率よく消化させておくことも大事です。

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Q13:勤務シフトを組む時など、施設が年休を割り振ってもいいですか?

本人の希望を聞くことなく、施設サイドが一方的に年休を割り振ることはできません。年休は、本人が取得したい時季を指定するのが原則だからです。
一方、平成31年4月からは、年休が10日以上付与されている労働者に対し、使用者は年5日を取得させる義務が発生しました。この場合、年5日の取得がすすまない労働者について、取得時季に対する本人の意見を聴取しかつそれを尊重して、使用者が時季を指定することとされています。必ずしも本人の希望通りでなくてもよいとはされていますが、いずれにしても、シフトを組む際には、あらかじめ本人の希望や意向を聞いておくことが必要でしょう。
なお、労使協定を結べば、年次有給休暇のうち5日を超える部分(つまり、少なくとも5日分は、本人が好きな時季にとれるように残しておいた上で、ということ)について、本人の希望によらず計画的に休暇取得日を割り振ることができます(「年次有給休暇の計画的付与制度」)。
付与の方法としては、事業場全体の休業による一斉付与、判別の交代制付与、年休計画表による個人別付与等があります。無床診療所は別として、医療機関として現実的なのは、個人別付与方式でしょうか。計画的付与制度は、年休の取得率向上の意味でも、また、Q12で問題となる退職前の一括消化を緩和する上でも、非常に有効な方法です。

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Q14:年休の「買い取り」があると聞いたことがあるけど、違法ではないの?

法定の年次有給休暇については、 休暇取得の権利を阻害することとなるため「買い取り」や「買い上げ」は禁止されています。「買い上げてもらえるなら、そっちの方がいいから休むのを我慢しよう」そんなことにならないようにです。
もっとも、法定を上回る日数分や、付与されてから2年間の時効で消滅してしまった日数分、退職日以降の消化しきれない日数分についての「買い取り」であれば、特に法律は関知していません。(つまり、労使合意により買い取っても違法にはならないということです)

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Q15:産休中や育休中に年次有給休暇は取得できますか?

産前産後休業期間中には健康保険から出産手当金が、育児休業期間中には雇用保険から育児休業給付金が支給されます。しかしこれらは、賃金の100%というわけではないので、それなら溜まっている有休を充てた方が得じゃないか? というご相談です。
産前産後休業は労働基準法に基づき、育児休業は育児介護休業法に基づき、それぞれ労働義務を免除するというものです。一方、年次有給休暇は、労働義務のある日に休暇を取って、賃金が支払われるという性格のものです。したがって、残念ながら、すでに労働義務が免除され休業している日について、あらためて年次有給休暇を取得することはできない、ということになります。
一方、すでに有休を取得する日が決まっていて、その後に産休や育休と被ってしまったような場合は、その有休を撤回しなければ取得可能です。ただし、その日については、原則として出産手当金や育児休業給付金は発生しないことになります。

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Q16:年休は、本人から希望がなければ与えなくてもいいのですか?

労働基準法上、年次有給休暇は労働者に与えられた権利ですが、本人からの取得希望がなければ、取得させる義務まではありません。
しかし、平成31年4月からは単純にそうも言えなくなりました。年休が10日以上付与されている労働者に対しては、使用者は年5日を取得させなければならないという義務が発生したからです。そのため、年休取得を希望せず、5日の取得がすすまない職員に対しては、施設側が本人の意見を聴取しかつそれを尊重して、取得時季を指定しなければなりません。(面倒です)
いずれにしても、本人が取りたいと言えば、時季変更権を行使しない限り取得させなければなりませんし、退職時であれば、まとめて消化されるという(施設にとっては何のメリットもない)リスクもあります。
それならむしろ、本人の健康やプライベートに配慮して、日頃から計画的に(当然5日以上)取得することを奨励した方が、働きやすい職場として人材の「定着」につながるでしょう。「計画的付与制度」を導入するのも一つの方法です。適度に年休が消化できる環境であれば、不満もたまらず、むしろ施設側が困るようなときは、職員も取得を抑制してくれるものです。(人にもよりますが、それは日頃のコミュニケーション次第ということで・・・)

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Q17:年休取得中に業務命令で出勤してもらうことは可能でしょうか?

年次有給休暇は、本来労働義務のある日にその義務を免除し、かつ通常の賃金を支払う、という性格のものです。
しかし、医療の現場では、非常災害や緊急時の対応など特別の事情がある場合に、年休取得者に対しても出勤をお願いせざるを得ないことがあるかもしれません。
このような場合において、出勤を命じること自体は違法ではないでしょう。ただし、少なくとも、「本人の同意」は必要であると考えます。逆に言えば、仮に本人が拒否したからといって、業務命令違反などに問うことは難しいでしょう。
なお、本人の同意を経て出勤した場合は、当然、有休休暇を取得したことにはなりません。出勤したのが1日の一部であったとしても、労働しなかった分が、半日単位や時間単位で消化されたという扱いになるわけでもなく、別に1日分を付与することになります。

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Q18:当日の朝になって出された有休の申請も認めなければならないのですか?

以前、ある看護部長から相談(愚痴)を受けたことがあります。前日はピンピンしていて、当日の朝、死にそうな声で有休を申請してきて、翌日はまたピンピンしている職員がいる。「仮病では?(酒豪らしい看護部長)」「いや、〇〇酔いじゃないんですか(覚えがある私)」
それはさておき、Q10で時季変更権は容易に行使できないという話と、Q11で時季変更権の行使をするかどうかの判断に必要な最小限度の期間について説明しました。
管理者としては、あらゆることを調整した上でシフトを組んでいるわけですから、当日の朝になって「時季指定」をされても、「時季変更権」を行使する時間的余裕がないのが一般的です。よって、有給休暇を認めなくても違法とははらないでしょう。つまり、欠勤扱いということです。(もっとも、就業規則等で当日の朝の申請も認める旨が規定されていれば、与えなければなりませんが。)
しかしその一方で、本人や子供さんの急病などの場合、当日の朝に「無理!」と思って連絡をしてくるわけですから、それを全て欠勤扱いするのも・・・というのが人情でしょう。そこで、よくあるケースが、「原則として当日の有休申請は認めない。ただし、やむを得ない場合として病院が認めた場合に限り、事後に振り替えることを認める」といった規定を就業規則に定めておくことです。少なくとも、当日の申請は、管理者や他の職員にとっても困る場合もあるわけですから、それが当たり前に認められることではない、と認識してもらうことは大切でしょう。

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Q19:年休を取得した職員が、実はその日、別のアルバイトで収入を得ていたことがわかりました。そんな場合でも年休で処理しなければならないのですか?

休んでバイトして収入を得ているなら、年休に対して通常の賃金を支払う必要あるの? 欠勤処理でいいじゃない! ・・・というお気持ちはわかるような気がします。
年次有給休暇はそもそも、給料の減額を伴わずに所定勤務日でも休めるように、権利として保障されているものですから。でも残念ながら、年次有給休暇の利用目的は問うことができない、ということになっています。(数少ない例外として、利用目的が「自社のストライキ」というのはさすがにダメですが)
使用者側が労働者の「時季指定権」(いつ、年休を取りたい)に対抗できるのは、「時季変更権」(事業の正常な運営を妨げる場合に時季変更の申し入れができる)のみです。 Q10参照
ですから、アルバイト目的の年休取得は認めない、ということはできませんが、だからといって、そのアルバイトによる疲労等が本来の職務に影響するのも望ましくありません。むしろ「服務規定」や「懲戒規定」の中で、使用者の許可のないアルバイトは認めないとか、一定の兼業禁止を規定するなど、歯止めをかけておくことが現実的でしょう。

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Q20:スタッフが年休取得中にオンコールで呼び出すことは問題でしょうか?

年休を付与するということは、その日の労働義務を免除したということなので、そもそもオンコール待機させること自体、問題があるでしょう。しかし、オンコール待機ということではなく、緊急時に休暇中のスタッフに出勤を要請することは、医療機関としてはやむを得ない場合もあるかと思われます。
もちろん、安易に運用できることではありませんが、あくまで、「本人の同意」に基づいて出勤してもらうことは可能ではないでしょうか。ただし、当然その日は、半日は休んだとか、〇時間分は消化したではなく、有休自体を消化したことになりませんので、他日に消化できなかった1日分を与える必要があります。

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Q21:業務の要領が悪かったり、急変対応等で休憩が取れなかった場合、どうしたらいいですか?

業務上、なかなかきちんと休憩が取れないのが皆さんのお仕事の大変なところです。が、管理者の立場としては、管理・指示を徹底させ、分割してでも勤務時間内に取得させることが必要となります。人間ですから、毎日7時間も8時間も連続して、集中した仕事はできませんし、途中、食事をとったり、あるいはちょっとリフレッシュする必要もあるでしょう。
「うちの施設、休憩も取れない」「取らせてくれない」が"当たり前"になってしまうと、何らかのトラブルが生じた場合に、付随して、それまで取れなかった休憩分を超過勤務として請求される可能性も否定できません。
本当に忙しい日には、休憩が満足にとれない日もあるかもしれません。しかし何より大事なのは、休憩を取れない、取らないことが恒常的にならないようにすることです。そのためにも、休憩の意義について労使で認識を共有しなければなりません。休憩は、労働基準法で定められた労働者の権利ですが、その一方で義務でもあると思います。

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Q22:休憩時間中の外出を許可制にすることは問題ありますか?

規律保持上、休憩時間中に院外に出ることを許可制にしている施設もあると聞きます。休憩時間は、権利として本人の自由に利用させることが原則ですが、違法にならないのでしょうか? 実は、休憩時間の外出の許可制については、行政通達で「事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない。」(昭23.10.30基発1575号)とされています。休憩時間と言えども、あくまで始業から終業までの拘束時間内ですので、何でも自由!ということではなく、規律保持上、必要な制限を加えても差し支えないという考え方です。ですから、規律保持上の必要性と、実際に院内では自由に休息できることが保障されている限り、外出許可制も特に違法ということではありません。

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Q23:「振替休日は1週間以内に取らないといけない」と聞いたのですが、本当ですか?

振替休日については、「管理者が知っておきたい労働基準法」に考え方を示していますが、その中でも、特に「1週間以内に取らないといけない」といった決まりがあるわけではありません。ただし、行政通達では「なお、振り替えるべき日については、振り替えられた日以降できる限り近接している日が望ましいこと」(昭和23年7月5日基発968号、昭和63年3月14日基発150号)とされています。労働基準法上も4週4日の休日を確保しなければならないとされているので、少なくとも、この点に留意する必要があるでしょう。また、法定休日上は問題ないとしても、1週間以内に取れない場合、(36協定内容や変形期間等の状況にもよりますが)時間外労働として割増賃金が発生する場合があります。それらを合わせて考えると、1週間以内に振り替えるという自主ルールは、労務管理上は無難なやり方かもしれません。

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Q24:夜勤16時間勤務は2勤務とカウントできるのですか?

3交代制から2交代制に移行する際、従来の準夜勤と深夜勤をくっつけて夜勤16時間とした場合に出てきた疑問だと思います。(あるいは、午前0時を跨ぐから?)
まず、労働基準法上の考え方としては、継続勤務が2暦日にわたる場合には、一勤務として取り扱い、その勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とすることになります。つまり、勤務としては、あくまで一勤務です。
ただし、雇用保険法上は次の考え方があります。離職票などで賃金支払の基礎となった日数計算をする場合、「深夜労働に従事して翌日にわたり、かつ、その労働時間が8時間を超える場合には、これを2日として計算し、たとえ深夜労働を行って翌日にわたっても、労働時間が8時間を超えない場合は、これを1日として計算する」というものです。
カウントする用途によって使い分けてください。

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Q25:夜勤の回数や時間などに対し、労働基準法の制限はないのですか?

毎月、管理者の方は、苦心して勤務シフトを組まれているかと思います。そしてこの質問は、管理者だけでなく、現場の職員からもよく寄せられる内容です。
残念ながら、労働基準法上、夜勤の回数や拘束時間などに関する定めはありません。法定労働時間や法定休日、変形労働時間制のルール(詳細は「管理者が知っておきたい労働基準法」を参照してください)にのっとって勤務が組まれているならば、夜勤勤務が長かったり、あるいは何回あったとしても労働基準法違反にはならないということです。
公的な目安としては、1965年に人事院が【2・8判定】として、「看護職の夜勤は8時間3交代勤務で月平均8回以内であること」や、1992年の看護師確保法では、基本指針として夜勤負担の軽減等(複数を主とした月8回以内の夜勤等)を示していますが、いずれも強制力があるわけではないというのが現状です。
一方、平成25年に日本看護協会が作成した「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」で示されている勤務編成基準では、「夜勤回数は3交代制勤務は月8回以内を基本とし、それ以外の交代制勤務は労働時間などに応じた回数とする」ことや「夜勤の連続回数は2連続(2回)までとする」ということだけでなく、勤務間隔や拘束時間、連続勤務日数なども基準を示すなど、非常によく考えられた内容です。この基準を参考にし、少しずつ勤務環境を改善していくのが望ましいでしょう。
なお個人的には、少なくとも医療従事者の勤務間隔や拘束時間などは、自動車運転者(「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」により行政指導が行われています)のように法律で規制されるべきだと考えます。

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Q26:宿直勤務は原則1回/週以下としていますが、本人の希望で2回/週とすることは可能でしょうか?

その勤務が、労働基準監督署長の“許可”を受けた宿直勤務という前提でお答えすると、できない、ということになります。なぜなら、一般の宿日直の許可基準(昭22.9.13発基第17号、昭63.3.14発基第150号)で、次のように定められているからです。
「宿直勤務は1回/週以下、日直勤務は1回/月以下であること」(詳細は「管理者が知っておきたい労働基準法」を参照してください)
宿直勤務は、「特殊の措置を必要としない軽度の、または短時間の業務」で、かつ「夜間に充分睡眠がとりうる」ことが前提であり、だからこそ、通常の労働時間にはカウントされません。その一方で、現場では、仮眠が十分取れないとか、宿直勤務明けに、フラフラで通常勤務に入ることがある、などの問題も生じているようです。
本人の希望なら・・・、と考えがちですが、そもそも2回/週以上の宿直勤務はあってはならないとお考えください。

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Q27:時間外労働や夜勤をさせてはならないのはどんな場合ですか?

労働基準法と育児介護休業法の中で、制限が設けられています。ざっと以下の通りです。
① 妊産婦が請求した場合、時間外・休日労働、深夜労働は免除(労基法)
② 3歳未満の子を養育する従業員が請求した場合、所定外労働は免除(育介法)
③ 小学校就学前までの子を養育する従業員が請求した場合、深夜業は免除(〃)
④ 対象家族を介護する従業員が請求した場合、深夜業は免除(〃)
⑤ 小学校就学前までの子を養育する従業員が請求した場合、時間外労働は1か月24時間、 1年150時間まで(〃)
①は女性労働者のみですが、②~⑤は男性労働者も対象となり得ます。①の時間外労働の免除と②の所定外労働の免除の違いは、①が法定労働時間を超える労働の免除であることに対し、②は法定労働時間を超えなくても、そもそも残業が免除されるということです。例えば、1日6時間のパートの方や、育児短時間勤務をされている方にとっての残業です。
ポイントは、これらはいずれも労働者からの「請求」があることが前提となります。ただ、請求がないから何もしないではなく、こういった制度があることを周知することも大事でしょう。
なお、労働基準法は母性保護という観点からの制度なので、請求することに条件は設けられていませんが、育児介護休業法は、雇用期間が1年に満たない方や週所定労働日数が2日以下の方などは請求できない(③は請求できない旨の労使協定を結ぶことができる)とか、請求しなければならない事項など、いくつかのルールが設けられています。

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Q28:当直の際、いつも患者対応や電話対応等で、短時間毎に寸断される睡眠しか取れず、ふらふらの状態で翌日勤務をすることがあるのですが、この状況に問題はないのですか?

問題ありありです。その当直勤務が、労働基準監督署長の“許可”を受けた宿直勤務ということであれば、通常の労働時間にはカウントされないので、引き続いて通常勤務に入ること自体、違法とはなりません。しかしながら、そもそも宿直勤務は、「特殊の措置を必要としない軽度の、または短時間の業務」で、「夜間に十分睡眠がとり得るものである」ことが大前提なのです。
宿直の際に業務が途切れなく続き、夜間の睡眠が取れないような状態が恒常的にあるのであれば、当直勤務の許可基準には該当しない(つまり、許可の取り消し)、ということにもなりかねません。何より、医療ミスなどにつながらないか心配です。
最近は、宿直勤務明けにはあえてシフトを入れない施設もあるようです。まずは、必要業務負担の軽減を図る努力や、効果ある睡眠が確保できるよう仮眠室などの環境を工夫すること。そして、どうしても状況が改善されなければ、通常の夜勤勤務とすることも検討する必要があるかと思われます。

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Q29:オンコールの回数に制限はありますか?

結論から言えば、オンコールの回数に労働基準法上の制限はありません。自宅でのオンコール待機は、そもそも使用者の指揮監督下にないので、原則として労働時間には当たらない、というのはQ4でご説明した通りです。しかしその中では、あえて「回数や頻度など過度に負担をかけないような配慮は必要」という文言も加えました。
いくら労働時間に当たらないからと言って、オンコール当番の際は、遠出ができなかったり、お酒が飲めなかったり(個人的には(´;д;`))、心身ともにゆっくりくつろげなかったりと、個人差はあるかもしれませんがそれなりに負担は大きいものです。
あくまで参考ですが、労働基準監督署から許可を得て行う宿直勤務は、自宅でのオンコールと同様、労働時間としてはカウントされないものの、それでも週1回までと定められています(Q26)。これをひとつの目安として、スタッフの率直な意見もヒアリングしてはいかがでしょうか。
もっとも、人員そのものが少なかったりすると、週1回では済まなかったり、管理者など特定の方にしわ寄せがいってしまうこともあります。せめて、手当など金銭的な配慮ももちろんですが、有休を取得しやすくするなど、精神・身体面での負担軽減ができればいいのですが。

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Q30:育児短時間勤務で働いている職員に対し、残業をお願いしてはいけないのでしょうか?

育児介護休業法では、3歳未満の子を養育する従業員に対して、本人が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなければならない(所定労働時間の短縮措置)ことを定めています。この規定に基づき、みなさんの施設は育児短時間勤務制度を導入しています。
一方、意外と知られていないのですが、育児短時間勤務者だから、イコール残業禁止、というわけではないのです。禁止と思い込んで、その一方で残業をお願いしているものだから、表に出せない残業(すなわちサービス残業)になってしまっていたケースもあります。
実は、育児介護休業法では「3歳未満の子を養育する従業員(労使協定で雇用期間1年未満などは除外可)が申し出た場合には、事業主は、その従業員を所定労働時間を超えて労働させてはならない(所定外労働の制限)」ことも定めています。
つまり、本人から申し出があれば残業をさせてはならないけれど、申し出がなければ残業を命じてもNGではないということです。
もちろん、本人から申し出がないからと言って、毎日のように残業をさせるのは短時間勤務制度の趣旨そのものを損ねるものです。本人に対しては、申し出の有無を確認するとともに、申し出がなく、残業をお願いしていい場合でも、必要最小限にとどめるなどの配慮が必要でしょう。

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Q31:パートや入職1年未満の職員にも、申出があれば育児休業を与えなければならないのですか?

育児介護休業法により、原則として、1歳未満の子を養育する労働者は育児休業を取得することができます。
ただし、労使協定により次の者を対象外とするのは可能です。 (1)勤続1年未満の者  (2)申出から1年以内に雇用関係の終了が明らかな者  (3)週所定労働日が2日以下の者
逆に言えば、そのような労使協定が存在しなれば、パートや入職1年未満の職員に対してであっても、申出があれば育児休業を与えなければなりません。
また、有期雇用労働者であっても、申出の時点で次の全ての要件を満たせば育児休業を取得できます。①引き続き雇用された期間が1年以上  ②1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
この有期雇用労働者の要件、令和4年4月から緩和されます。具体的には、①の要件が撤廃され、②の要件のみになります。勤続1年未満の有期雇用労働者については、上記の労使協定の締結により除外可とすることができます。 

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Q32:明らかに要介護や要支援ではない状況と思われるのに介護休暇を希望されるケースがあるのですが、拒否できるのでしょうか?

よく誤解されているのですが、育児・介護休業法でいうところの要介護状態と介護保険でいう要介護は、同じではありません
育児・介護休業法上の要介護状態は、「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」をいい、具体的には「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(平成7年婦発第277号・職発第696号) が示されています。
対象家族の範囲や申出の手続等について、法の規定より厳しい条件を設けることは許されませんし、制度の理解のために前述の基準等を院内規定等で周知しておくことも大事でしょう。
なお、介護休業の申出の際、法律上、事業主は「対象家族が要介護状態にある事実」を証明することができる何らかの書類(「医師の診断書」に限定されません)の提出を求めることができます。ただし、この書類が提出されないことをもって休業させないということはできないとされています。(うーん、難しい・・・)

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Q33:〇〇手当など、定額の手当をみなし残業代として支払うことは可能でしょうか?

割増賃金を定額払いする場合、大前提として、その「〇〇手当」が割増賃金の定額払いであることや、それが時間外労働何時間分の割増賃金に相当するのか、その計算根拠などを就業規則等に明記することが必要です。
また、実際に就労したの労働時間から計算した割増賃金より「〇〇手当」の額が少ない場合は、その不足額も合わせて(つまり、実際に計算した割増賃金全額を)支払わなければなりません。なお、実際の割増賃金と「〇〇手当」との過不足を翌月に繰り越して相殺することはできませんし、定額払いを前提としている以上、その時間分の労働時間が不足したからといって、減額することも問題があります。

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Q34:問題のある職員を解雇したいのですが、どうすればいいですか?

解雇に関して、労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(解雇権乱用法理といいます)と定められています。
勤怠不良、勤務成績、勤務態度不良の職員の解雇に際しては、①本人の不適格性是正のための指導、配転等の改善の努力をしたか、②本人の知識、能力、技術不足や協調性欠如につき教育、指導、訓練等を実施したか、③他の従業員等との均衡のとれた解雇処分か、④当該解雇が不当な動機・目的によらないか、といったことに留意する必要があります。
これらを尽くしてなお、このような職員を放置しておくと施設の秩序を保てない、多大な損害を被るかその恐れがあり、解雇しなければ施設の事業運営に支障をきたすといった事情が存在する場合に、解雇が有効と判断されるかと思われます。もちろん、就業規則等の根拠(解雇事由の明記)と、解雇予告手続き(30日以上前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う)も不可欠です。

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Q35:昇進して管理職になったら、管理職手当はつくのですが、残業代が出なくなります。これって当たり前なんですか?

よく一般企業でも、「課長に昇進したら(残業代がでなくなり)手取りが減った・・・」と耳にすることがありますが、誤解があるようです。
労働基準法41条では「監督もしくは管理の地位にある者」については、労働時間、休憩、休日に関する規定が「適用除外」となることを定めています。「適用除外」ということは、法定労働時間を超えて働いたり、休日労働をしても、割増賃金の支払い対象にならないということです。
なぜこんな規定があるかというと、これらの方は、事業経営の管理的立場にある者またはこれと一体をなす者であり、労働時間等の規制を超えて活動しなければならない企業経営上の必要から認められる、という考え方に基づいています。
ただし、この労働基準法における管理監督者の範囲は、極めて狭く限定的なものとなります。
少なくとも、単に「師長」や「科長」など管理職になったから労働時間等に関する規制が適用除外になり、残業代を払われなくて当たり前、という単純な話ではないのです。
具体的に、行政通達等では次の3要件が必要とされています。
①重要な職務と権限が与えられており、経営者と一体的な立場にあること
②労働時間に関して裁量権があること
③賃金等相応の処遇を受けていること
これらの要件を、肩書ではなく、あくまでも実態に照らし合わせて判断をすることになります。

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Q36:保健指導や健診のための通院休暇は、有給にすることはできないのですか?

男女雇用機会均等法では、事業主に妊娠中・出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理)を講じることを義務付けています。例えば、女性労働者が保健指導または健康診査を定期的に受診するために必要な時間を、妊娠23 週までは1回/4週、妊娠24 週~35 週までは1回/2週、妊娠36 週~出産までは週1回、産後1年以内は医師等が指示するところにより確保する、といった具合です。
その一方、残念ながら法律上は、その時間に対して給料を保障することまでは義務付けていません。これは産前産後休業や育児休業についても同様で、「ノーワーク・ノーペイ」(働いていない時間分は払われない)という基本的な原則に基づいています。
ただし、産休や育休に関しては、一定要件で健康保険や雇用保険から給付金が支給されるのですが、母性健康管理の措置としての休暇には、そのような給付もありません。
事業主が特別休暇として有給にするのが理想ではありますが、実際は年次有給休暇、それも労使協定に基づく時間単位取得を導入して対応するのが現実的かと思います。

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